招き猫

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 ここは、かつて猫に手招きされた高貴な御侍さんが嵐から助けられたと、お礼の品々を送った。  招き猫の由来となったとも言われる宿。  そんな招き宿に、今日も一人の少女が猫に招かれて迷い込んで来た。 * (夢中で猫を追いかけていたら変な建物に来てしまったわ……)  私は、一言だけ声をかけて帰ろうとした。 「すいませーん……」  すると、奥から宿屋の女将さんが姿を現した。  それは、とてもとても綺麗な姿の女将さんで、私は目を奪われてしまった。 「あらあら、これは——小さなお客様だ事。十二歳くらいかね? 私は、この宿の女将の夜見(よみ)と言う者だよ。あんたも招かれたって事は、何か悩みがあるって事じゃないのか? まぁ、いい。とにかく中に入りなさい」  何故か私の歳を言い当てた夜見さんは、私を宿の中へと招き入れると宿の中では沢山の猫達が出迎えてくれた。  チャ猫に、ミケ、黒猫に白猫——多種多様の猫達が女将さんである夜見さんの後をついて行く。  中に入ると夜見さんは、客室へと案内してくれた。 「どうぞ、座ってちょうだい」  そう言われた私が腰をかけると夜見さんは、お茶を出してくれ——それから話し始めた。 「それでは、話を聞く前に名前を教えてくれるかい?」  私は、夜見さんに「珠世(たまよ)です」そう名乗ると、では——「たまちゃんだね」と返された。  親にもタマと呼ばれていた私は、その呼び方で納得すると、早速——悩みを相談する事にした。  私の家は、商人の商品を馬車で運搬する仕事をしていた。  そして、村で一番の商人に嫁にとの話が持ち上がっていた。  結婚の話は、ありがたいのだが……何しろ相手が良い噂を聞かない60過ぎのお爺さん商人なので、正直言って乗り気では無く。どうにか回避出来ないかと悩んでいたところであった。そんな矢先に猫に招かれて来たのが、この宿であった。  そして、夜見さんは「どれどれ……」そう言って、私の頭に手を置くと。 「ああ、これなら問題無いね。  たまちゃん今日は、この宿に泊まって行きなさい。悪いようにはしないから……」  そう夜見さんに言われて私は、今晩——この宿に泊めてもらう事になった。  そして、私が寝る間際になると部屋に猫が集まって来て、その夜——私は沢山の猫達と一緒に寝る事になった。  すると、とても不思議な夢を見た。それは、商人の家に泥棒が入りお宝や今までの悪事に関する書物が奪われ——商人が捕まる夢であった。  そして、翌朝その夢の事を夜見さんに伝えると「あら、素質があるのかも知れないわね。  ひと段落したら、また尋ねて来なさい」と言われて私は、必ずまた伺うと約束をして宿を後にした。 *  私が村に戻ると、商人の家に泥棒が入ったと村は大騒ぎ。  それから数日すると、悪事が公になった商人が捕まると、結婚の話は無くなり晴れて自由の身となった私は、改めて夜見さんに会いに行く事にした。  途中迷いそうになると猫達が迎えに来てくれたので無事に招き宿に到着すると、夜見さんに「おかえりなさい」と出迎えられると——私は、咄嗟に「」と答えた。  そして、猫達に気に入られた私は——夜見さんにも目をつけられ、猛烈なアプローチに負け、この招き宿で働く事になった。
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