ZERO

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エントランスホールを抜け、赤く重圧感のある会場の押し扉を開く。 ホワイトとゴールドを基調としてデザインされたパーティー会場は、老若男女問わず沢山の人で溢れていて、着物、ドレス、スーツと服装も様々。 主催者である豊子先生の息子の意向で、あくまでもカジュアルに……と立食パーティー形式だ。 カジュアルと言っても一流のシェフが腕を振るうビュッフェは、高級な食材をふんだんに使っていて豪華。 種類も豊富だし、見た目もそうだが味も文句なしだと思う。 ロブスターが美味しそう。 「お1つ下さいな」 「畏まりました」 ボケっと突っ立っている私の前を、正装したウェイターがシャンパンやワインの入ったグラスを持ち、忙しく歩いていく。 煌めく世界の片隅で、初老のピアニストが繊細な指使いでグランドピアノを操り、ショパンの曲を奏でる。 【華麗なる大円舞曲】 明るく軽快な曲調が会場の雰囲気に合ってる、と思った。
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