ZERO

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「豊子先生〜」 「あら、あなたたち」 数百人が各々好きに歓談をする中、会場の中央で若草色の色留袖に身を包んだ豊子先生がお弟子さんに囲まれ上品に微笑む。 その中にお母さんとお姉ちゃんも居た。 お母さんがベージュ、お姉ちゃんは藤色の牡丹や椿の柄が入った訪問着を着ている。 私とお姉ちゃんも豊子先生の弟子の1人だ。 代々、華道の家元の我が家。 お姉ちゃんと私は、二言目には『“(たちばな)”の娘として恥じないように』と言う教育熱心な母に押され、華道以外にも日舞、茶道、書道、料理教室、お作法教室と習い事ばかりの日々を過ごしてる。 楽しいと言えば楽しいけど、こうも毎日だと窮屈に感じてくるのも事実。 今年25歳のお姉ちゃんはそんな生活をいち早く抜けたくて、1人暮らしを企んでる真っ最中だったりする。 いいな〜と言ったら『夜遊びしたくなったら言いな。協力してあげる』と悪い笑顔で言ってた。 いっそ私も連れてけ、と言いたい。
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