ZERO

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「ありがとう」 「姿が見えなかったようですが。どこに行ってらしたんですか?」 「中村さんには関係ありません」 グラスを受け取るだけ受け取り、冷たくあしらった私に中村さんは澄ました顔でふっと小さく笑う。 全然動じていない……。 この人はいつもそう。 いい意味でも悪い意味でも感情を昂らすことがない。 こちらがどう出ようと一定の態度を保って崩さない。 それは大人の余裕によるものなのか、それともこの人の黒さによるものなのか……。 それすらも謎。 「中村さん?他人行儀な。親しみを込めてトッシーと呼んでください」 「黙れ。トッシー」 「冷たいなー。もう少し懐いてくださいよ。僕達、婚約者なんですから」 婚約者。 そう。半年前、突如として私の前に現れたこの青年は紛れもなく私の婚約者だ。 親が決めた、ね。
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