ZERO

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「あぁ、そうだ。チエミさんが探していた“Black Berry(ブラックベリー)”というチームの情報を掴みましたよ」 「嘘っ!?」 「まぁ、掴んだと言ってもほんの少しですが」 「何?少しでいいから教えて」 「いいですよ。デート1回で教えて差し上げます」 「……お断りします」 「そうですか。それは残念」 ズレた眼鏡を中指で正しい位置に戻し、不敵に笑う中村さん。 全然、残念そうじゃない。 1ミリも残念と思ってなさそうに見える。 でも、ここで私が“行く”と言えば本当にデートに行くんだろう。 この人はそういう人だ。 それも外人顔負けにエスコートしてくれて、オシャレで味も文句無しなレストランに連れて行き、平然とした顔でプレゼントの1つくらい渡してきたりする。 実際、初めの頃に社交辞令で何度か行ったけど、全てそうだった。 それに遊び心のないただの紳士かと思いきや、そんなこともなく……。 たまには自然と触れ合いましょう。とクルーザーに乗って、野生のイルカに会いに行ったり。 その辺ぶらっと散歩でもしましょうか。とヘリで空中散歩に行ってみたり。 ついつい緊張も忘れて素直に喜ばされてしまう程度には、悪戯心もあり女慣れもしてる。 突き放す気満々だったのに、なんだかんだ言って結局手懐けられてしまってるんだから。 まったく。侮れない。この人だけは……。
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