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亡くなった私のお兄ちゃん……昴は所謂“自由主義”というやつで、規律と伝統を重んじる一族の中でも異端だった。
マルサラカラーに染めたアシメトリーの髪と、細く鋭い目、高い鼻、右耳に付けた三つの星型のピアス。
目つきは悪いけど、笑うと八重歯が見えて可愛い。
お兄ちゃんの印象と言えばこれ。
腕っ節が強く、短気で俺様で狂暴。喧嘩は日常茶飯事。
常識、世間体なんか“クソくらえ”って感じで、全国とは言わずとも少しばかり名の知れた暴走族のトップだったお兄ちゃんは、刺繍の入った白い特攻服を纏い、改造した単車で仲間とよく走り回っていた。
どうして暴走族に入ったの?と、お兄ちゃんに聞いたことがある。
親の言う通り平穏に真面目に生きてきた私には、到底理解出来ない世界だったから。
そんな私にお兄ちゃんは笑って『楽しいからだ』と答えた。
単車で走り回るのも、生傷が絶えないような喧嘩ばかりの毎日も、仲間と過ごす日々が全て楽しい。と。
そんなお兄ちゃんに父母姉、祖父母、親戚、教師、ご近所さんまで冷たい目を向けていた。
皆よく怒っていたし。特にお母さんのお兄ちゃんへのキレっぷりは毎度凄まじいものだった。
竹刀を持って追い掛け回したりとか……。
お兄ちゃんもお兄ちゃんで何かと反抗してた。
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