ZERO

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そんな、皆に慕われていたはずのお兄ちゃんが亡くなったのは去年の夏。これから夏休みに入るって時期だった。 その日、いや……前の日からお兄ちゃんは何だか様子がおかしくて。その日は朝から慌ただしく家を出て行ったきり、夜になっても帰って来なかった。 お母さん達は“いつものこと”と流してたけど、何度電話を掛けても出てくれないし、私は嫌な予感でいっぱいだった。 そして次の日、嫌な予感はただの予感だけで終わることはなく。 取り壊し予定の廃墟のホテルでお兄ちゃんが亡くなっていたのを、訪れた持ち主のオーナーと工事責任者の方が発見した。 警察から知らせが届いた時は、ただ呆然とするしかなくて。 お母さんもお姉ちゃんも泣き喚いていたし、お父さんも取り乱していた。 検視の結果、服毒自殺と判断された。 毒の入手先とかは不明なまま。それに暴行を受けた痕もあった。 けれど、お兄ちゃんは乱闘して補導されることも多々あったし、刑事さんもあまり真面には取り合ってくれなかった。 毒が入っていた小瓶にもお兄ちゃんの指紋しか残っておらず、現場の状況的にもそれで決まりだったらしい。 “そんなはずはない”と散々主張したけど、覆すことは出来ないまま……捜査はそこで終了した。 でも、私は信じていない。信じられない。 だって……帰ってきたお兄ちゃんの耳からピアスが無くなっていたから。
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