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今だったらきっと大丈夫だなんて、数十分前まで私の内がわを満たしていた根拠のない確信は、やっぱり幻想だった。
打ち砕かれるのがあまりにもはやくて、どうして私はこうなのだろう、こんな私でしかいられないのだろう、と、自分自身を恨まずにはいられなかった。
「私、人間失格なの。大人のおんなのひとじゃ、ないの。一生、なれないの」
早熟な嵐は、きっと中学生の頃におんなを抱くことをおぼえた。高校生になると発情したおんなの匂いを常にまとわせるようになっていた。
あの頃。クラスメイトの女子のほとんどがすでに経験済みだった初潮を、私はまだ経験していなかった。
調べたら、十八歳までには九十八パーセント訪れるものらしい。だから、待っていた。嵐に追いつくその日を。
嵐が驚くほどの速度で成長して、大人のおとこのように、近寄ってくるおんなたちを端から抱いていた頃。背の低いひとも高いひとも、痩せたひとも太ったひとも、少女であればほとんど皆、胸のふくらみが豊かになり、骨盤が広がり丸みを帯び、異性をその柔らかな丸みで誘うようになる頃。
私の身体は、かたく閉じたまま、いつまでも開かない蕾だった。
そして十八歳を迎え、二十歳を超え、二十六歳になった今でも、私は初潮を迎えてはないし、身体の線は大人の女性のもつ柔らかさとは程遠い。背ばかり伸びて貧相な身体は、成長途中で骨と筋肉と脂肪のバランスを一時的に失っている少年のようだ。
高校生の頃、病院で原発性無月経という名前と、その原因を教えられた。
治療を試みたこともあったけれど、どんな種類の治療も私の体質には合わなかったのか何ひとつ続けられなかったので、はかばかしい結果は得られなかった。
人間失格、と言ったけれど、正しくは、動物失格だろう。
だって、動物が命をなす根幹、存在理由となる根幹、生命を繋ぐといういちばんの役目を、まっとうできないのだから。
人間が生きる理由なんてひとそれぞれ無数にあるだろうけれど、生き物が生まれる理由は、命を次の世代に繋ぐことだ。だから、命を繋げない私の身体の欠陥は、どのように受け止めたらいいのだろう。
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