南と、桃色のアフタヌーンティー

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 いつもより甘く「麻未」と呼ばれると、もうなんだっていい気がした。きっと嵐は一生菫を愛したままなのだろう、そうだとしてもいい気がした。  嵐が私を傍に置いたままでいてくれるなら、なんだっていい。私は本気でそう考えている。  そして、同じくらいの強さで、もういっそ、私を捨てて菫を求めてしまえばいいのに、と、何度も何度も考える。  菫が嵐を受けいれない、嵐が菫を受けいれない、はずがないのに。  ふたりして、いったいなにを恐れているというのだろう。    
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