22歳

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 海外での暮らしが長く、これまでの人生で生家とはあまり深く関わらずに過ごしてきた律は、帰国してから強制参加させられる一族内での催しや人間関係を煩わしく感じているようだった。 「じゃあ、3年くらい待って、結婚しよう。そしたらちょうどいいんじゃない」  指輪の代わりに、指切りをした。幼い女の子と男の子が「おおきくなったらけっこんしよう」と約束するみたいに。  私は、3年、と心の内で呟いた。  3年でなにができるだろう。貯金して。安心して暮らせる場所を探して。どこに住むとしてもちゃんと就職できるように、何か資格も取っていたい。律から離れるための準備時間として、足りるだろうか。3年間は長いだろうか。あっという間だろうか。  就職活動を経て入った会社の新入社員のうち、女子は私を含め3人だけだった。男子は10人近くいるけれどみんながみんな、できるだけ早く結果を出してやろうと息巻いていて、見ているほうが疲れるくらいにぎらぎらしている。特に営業部配属の場合は顕著だ。  内々定をもらって以降、何度か研修を兼ねた内定者同士での集まりがあったので、同じオフィスで働く同期社員のほとんどのことは互いの顔と名前、出身大学といった簡単なプロフィールまで把握していた。  新入社員研修が終わり、それぞれが各部署に配属され、仕事を覚えはじめてしばらく経った頃。新入社員歓迎会という名目の飲み会が開かれることになった。私が所属する経理部をはじめ、新入社員が配属された部署がいくつか合同で行うらしい。そうすると、新入社員は全員、そして先輩社員も数十人が出席する、そこそこに規模が大きい会になるようだ。 「紅谷さんが参加してくれないと、新卒の女子、私だけになっちゃうんだよね」  歓迎会に参加するよね、と同期の女の子に尋ねられた。私以外のふたりの女子のうちの一人だ。もう一人の子はすでに退職予定で人事部付になっていると教えられた。二人は結構仲良くしていたようだから、目の前のこの子はきっと残念がったに違いない。  私とは研修のときにもあまり言葉を交わさなかったのに、いきなり妙に馴れ馴れしく、自分の近況などまでついでに話してくる彼女に驚く。
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