25歳ーⅡ

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 ホットドリンクをテイクアウトし、紙カップを両手に包んで暖をとりつつ、ちびちびと口に運びながら歩く復路。その途中、ちょうど外回りから帰ってきた赤羽さんと遭遇した。 「おつかれさまです。コーヒーブレイクですか」 「はい。外回り、おつかれさまです。ちょっと寒くなってきましたね」 「まあ。でも俺は、汗ばむより全然いいですよ。汗っかきだから、夏はシャツに汗染みがないかってどきどきしてるんです」 「営業職としては気になりますね」  彼が笑うから、私もつられて少し笑う。 「そこのコーヒー、俺もすきです。何買ったの?」 「キャラメルマキアートを。甘くて、ミルクが濃厚で、疲れたときに効くんです」 「へえ。飲んだことないな。ひと口、いいですか」  私が答えるより先に、カップを包んだ手をそのまま包みこまれ、彼の口元まで持っていかれる。大きな男の手はひやりと冷たくて、その冷たさに、どくんと心臓が跳ねた。 「本当だ。甘い」  と、赤羽さんは顔を顰めた。 「甘いもの、ダメでしたか」 「いえ、多少は平気なんですけど。ちょっと許容範囲超えた甘さでした」 「だから、甘いって言ったでしょう。何でわざわざ飲むんですか」  そう言うと、彼の眼差しから溢れる光の色が変わる。 「紅谷さんがすきなもの、知りたいなって思って」  この目を、その意味を、私は知っている。 「そうだ、今度飲みにいきませんか。いい店見つけたんです」 「あ……私は……」 「彼氏さんに怒られちゃいます?」  いつか聞いた言葉。はじめて一緒にランチに行った日。  あの日とちがって何の冗談も含まれていない真面目な声音に、また、心臓が鳴った。 「紅谷さん、彼氏いるんですよね」 「まあ。一応」 「一応ってなんですか。もしかして、うまく行ってないとか?」 「それは……どうなんでしょうか。うまく行くとかいかないとか。そんなこと、考えたこと、ないです」 「へえ。珍しい」 「そうですか」 「もしかして、来るもの拒まず去るもの追わずって感じですか。紅谷さん」 「え? それも、考えたことないけど……違うとは……」  答えを紡ぎながら首をひねる。  最近彼といると、自分自身の胸の内を少しずつ紐解いているような気分になる。彼が、私の考えていることや気持ちを知りたがるから。 「ちなみに俺は、気になっちゃったら、相手に恋人がいるいないに関わらず突っ走りたくなるタイプです」
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