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「───ポチ」
低過ぎない心地の良いテノールの声が耳に届き、顔を上げた。そこには、着崩されたワイシャツの上から濃紺のカーディガンを羽織り、気怠そうに私を見下ろす由良先輩の姿。風に揺れるプラチナブロンドの髪の間から、銀色に輝くピアスが覗いた。
由良先輩と付き合って早数週間経つけど、この美しさにはいまだに慣れない。
「なんでジャージ?」
学校指定のジャージを着た私を上から下へ視線を移しながら確認すると、由良先輩が首を傾げた。
「え、えーっと、さっき転んで、制服を汚してしまったので…」
何となく由良先輩と目を合わせられなくて、視線を外しながら答える。今の返答で変に思われないか不安になった。ぎゅっと両手を握りしめていると由良先輩は「ふーん」と相槌を打ち、私の座るベンチに腰掛けた。
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