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あの日、由良先輩に相談することを躊躇ったせいで私の心の中に生まれた不安は更に大きくなっていった。
もし、嫌がらせのことを言えなかった理由が、由良先輩を信用していなかったからだとバレたら?
失望されるのが怖かった。そんな酷いことを考えていたのだと、知られるのが嫌だった。それがバレるくらいなら、何も言わず嫌がらせに耐える方が100倍マシだと思った。
私は、卑怯な臆病者だ。
「ポチ」
由良先輩の綺麗な手が私に触れる。まるで、割れ物を扱うような優しく繊細な手つきで。もし、私が考えていたことがバレたらこの手は離れていくのだろうか。そんなの、嫌だな。
「ポチはさ、俺に言わなきゃいけないことがあるんじゃないの」
まるで、全てを見透かしているような目で、由良先輩は私を見つめていた。
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