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「………つ、次からは寝坊せず、ちゃんとお弁当を作りますので、」
「違う」
「ほ、本日はお日柄もよく…??」
「……チッ。」
え。し、舌打ち…?
由良先輩の美しい口から、舌打ちが出てくるなんて思っていなくてポカンとした顔で見上げた。心無しか由良先輩は不機嫌そうだ。
私の返答が気に入らなかったみたい。由良先輩が聞きたいことは、何となく分かってる。でも、言いたくなかった。
一向に何も言おうとしない私に由良先輩はため息をつく。そして、口を開いた。
「俺はお前に嫌がらせをしてるのは、誰だって聞いてんの。」
由良先輩の言葉に、怒りが滲んでいた。由良先輩に全部、バレてる。バレてしまった。どうしよう、由良先輩に失望されるかも。どうしよう。恐怖で、身体が震えた。自分を落ち着かせるように、ぎゅっと両手を握る。
そこに、由良先輩の大きな手が重なった。
「大丈夫、俺はポチに対して怒ってるわけじゃないから。だから安心して、話して」
私を落ち着かせるような優しい口調だった。由良先輩に大丈夫、大丈夫だと言い聞かせられると、なんだか本当に大丈夫な気がしてきた。
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