さん

11/27
前へ
/179ページ
次へ
「後は俺が何とかする。もう大丈夫だから」 ああ、、なぜ私は、この人のことを信用できないなんて思ってしまったんだろう。 確かに、私の知る由良先輩は冷たい人だった。 それでも私のことは、こんなにも大切にしてくれていたのに。 由良先輩の優しさを噛み締めるように、ぎゅっと抱き返す。私はもう、由良先輩を信用できないなんて思わない。 どんなことがあっても私は、由良先輩だけは信じよう、そう心に誓った。 ────……この時、私は気づかなかったんだ。 私を抱き締める由良先輩の瞳が、静かに、でも確実に、黒く暗い闇に沈んでいったことに。 「お前を悲しませたり傷つける奴は、俺が全部消してあげる。だから、お前は安心して笑ってて。」 私に聞こえないように呟かれた、その言葉に。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

290人が本棚に入れています
本棚に追加