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───きゅんっ。
突如、目の前に現れたキューピットに、トスっとハートを射抜かれてしまった。
……って、あたしってば、親友の弟で小さい時から知ってる男の子になあにときめいちゃってんのっ!!!!
きゅんきゅんしちゃってんのっ!!!!
あれはこの場を切り抜けるための嘘なんだから変な勘違いすんな、あたし。
そう自分に言い聞かせて頭に浮かんだ邪な考えを打ち消すと、ぴとっと身体を翠くんの方へと密着させて「そ、そうっ!この人はあたしの愛する彼氏なの!」とラブラブアピールをして翠くんの嘘に全力で乗っかってみるけど。
「……っ、最悪」翠くんは黛さんに聞こえないくらいの小さな声でぼそっと呟いたかと思えば、何故か片手で顔を覆い隠して、はああっと深い溜息を吐く。
えっ、そ、そんなに、嫌がられるとは…。
地味にショックを受けて落ち込んでいると、突然、宙ぶらりんになっている手首を翠くんに引かれてはっと我に返る。
「…………じゃあ、そういうことなんで。この人返して貰いますね。」
翠くんは黛さんを一瞥して冷たく言い放つとあたしの手首を引いたまま連れて歩く。黛さんはもうあたし達を追ってくる気はないみたいで、ほっと胸を撫で下ろした。
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