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「てか、もういい?」 明らかに早くここから立ち去りたいという雰囲気を隠すことなく醸し出す翠くんに「あ、うん。呼び止めちゃってごめんね」と苦笑いを返すと、買い物を済ませてさっさと帰ってしまった。 ここまで徹底的に嫌わんでも、、と肩を落としてしょげつつ、碧心に頼まれたものを買い終えて外に出ると「おっそ。」と帰ったと思っていた翠くんが気だるそうに立っていて、目を丸くする。 「えっ、す、翠くんっ!もしかして、あたしを待っててくれたの…?」 「暗い夜道を女一人歩かせるほど俺は鬼じゃねーよ。それにどうせ行先、一緒でしょ。今日うちに泊まるって姉さんから聞いてる」 「そ、そうだけど…」 「クリスマスに予定ないなんて、かわいそ。」 さ、最後の余計な一言は聞かなかったことにしよう。まさか待っててくれていたなんて思っていなくて驚きで呆けたままのあたしからお酒やお菓子がパンパンに入って重くなったレジ袋を「持つよ」と翠くんが奪い取ると、スタスタと先を歩き出す。 あれ、なんか今日の翠くんめっちゃ優しい。
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