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「ま、待ってよー!」 先を歩く翠くんの背中に小走りで追いつくと、隣に並んで歩く。今日はうざいから近寄るなとか言わないんだ、とちらりと横目で翠くんを盗み見ていると、不意にヘーゼル色の瞳が動きあたしを見下ろして、視線が絡み合う。 あ、やばい。 翠くんのこと見てたのバレちった。 今度はどんな毒舌を言われるのかと身構えていると、突然、翠くんが長くて綺麗な指があたしの頬に当ててきて「冷た。」と呟く。 「こんな寒い中、よくそんな薄着で外出ようと思ったね」 「いやー、碧心ん家近いからこれでもいけるかなーって思って」 「あんた馬鹿なの」 この子は本当に息するように暴言を吐くな。 そりゃあ、有名な私立の進学校に通う翠くんに比べたら最底辺のFラン大学通いのあたしなんて馬鹿に見えるでしょうけど。 むっと唇を尖らせていると「これでも付けとけば」と翠くんが自分の付けていたマフラーを外してあたしの首元に巻き付けてくれて、柔軟剤の匂いが、ふんわりと広がった。 「……ありがとう。翠くんはいい子だね。嫌いなあたしにまでこんなに優しくしてくれるなんて」 昔よりはぶっきらぼうになったけど、根は変わらず優しくていい子な翠くんに感心して、マフラーに顔を埋めながら呟くと「は?」と翠くんは麗しいお顔を顰めて、暫く沈黙した後、はぁっとため息を吐く。 「……別に、俺はあんたのこと嫌いだなんて一度も言ってないだろ」
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