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た、確かに、翠くんから直接、嫌いだと言われたことは一度もない。 ないけど…。 「じゃあ、翠くんが急にあたしに冷たくなったのはどうして?昔はあんなに懐いてくれてたのに」 「……それは、あんたを見てるとイライラするから。」 「それって、」 「嫌いって言ってるようなもんじゃないの」と口にしようとして飲み込んだ。だって、いつの間にか、翠くんの顔が鼻と鼻がくっついてしまいそうなほどすぐ近くにあったから。 息を飲むほど美しい顔に見惚れて、目を見開いたまま身体を硬直させているあたしをビー玉のようなヘーゼル色の瞳が静か捉えた。 翠くんの瞳は本当に綺麗だと思う。 色は碧心と同じなんだけど、純度が全然違くて、、宝石みたいに凄くキラキラしてる。翠くんのこのキラキラをあたしはもう二度と穢したくないし、穢してはいけない。 「いっそのことあんたを嫌いになれたら楽だったのに。」 不意に、翠くんが呟いた。どういうこと、と聞き返す前に翠くんの身体があたしからすっと離れてすぐさま背を向けられてしまう。 無言のまま、また先を歩き出す翠くんの背中がどこか儚く切なげだったから、今あたしが彼に何かを言えば傷つけてしまいそうな気がして…。 聞きたいことはいっぱいあったけど、あたしも押し黙って、翠くんの後をついて行くことしかできなかった。 ねぇ、翠くん。あたしには分からないよ。 翠くんの言葉の意味も。 翠くんがあたしに切ない眼差しを向ける理由も。
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