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「ねぇ、碧心。あたしはね、翠くんには綺麗な恋愛をして欲しいんだよ。ちゃんとした素敵ないい子とね。だから、あたしみたいな女に大事な弟を簡単におすすめしちゃダメだよ。碧心」
綺麗な翠くんには綺麗な女の子が似合うの。
あたしなんかじゃなくてさ。
まあ、翠くんだってあたしみたいな女は絶対にお断りだろうけど。なんかあたしを見てるとイライラするみたいだし。あたしのこと嫌いではないみたいだけど、それってほぼ嫌いみたいなもんでしょ。
あたしの話を何も言わずに聞いていた碧心は「ふうん」と興味なさそうに頷くとビー玉のような無機質な瞳をすっと細めて、桜色に染まった唇をゆっくりと開く。
「羽依は残酷だね。そして、凄く酷い女。」
「碧心さん、もしかしてあたしのことディスってます?」
おちゃらけて返してみるけど、どうやら碧心のこの言葉はあたしに向けたものではないらしく「あなたもそうは思わない?」と問いかけるようにあたしの後ろの方に視線を移して
「───ねぇ。翠」
呼ばれた名前にあたしも慌てて振り向いた。すると、そこには無表情の翠くんが立っていて「す、翠くん!」と驚きで肩が大きく跳ね上がる。
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