0人が本棚に入れています
本棚に追加
ボクは最後のパーツを、そっと、そーっとはめ込む。
「よし!ついに完成だ!」
ボクは額の汗を拭った。
達成感から、体が高揚して思わず笑みが零れる。
この日をどんなに待ちわびたか。
長かった。実に長かった。
完成まで、こんなに長くかかるとは思いもしなかった。
でもそんな長い月日も、いまボクの目の前にある“完成した”状態を見れば、報われるというものだ。
「うん。上手くできた。ほんとうに上手くできたなあ」
ボクの目の前には、裸の人間が寝ていた。
ゆうに100を超えるパーツを組み合わせて作ったボクが愛した“きみ”がそこに寝て居たのだ。
生前のきみによく似たパーツを、いろんなひとから貰って集めて、ボクが手ずから作ったきみ。
「ああ。おかえり、愛しい人」
愛しさが溢れて思わず抱き締めれば、きみからぐちゃりという異音がした。
よく見れば腕の中には腐臭を放つ肉片がある。
気づけばきみはどこにもいない。
「…………あぁ、……壊れた……仕方ない。また集めなくちゃ……」
きみだったものからさっさと離れると、ボクは革手袋を嵌め、愛用のリュックサックを背負う。
ファスナーが開いていたのか、がちゃりと音がなり、錆びたノコギリが転がり落ちた。
「なんだよ。もう錆びちゃったのか。また新しいの買わなきゃな」
ゴミになってしまったノコギリを靴で蹴って角に避けた。
きみだったゴミにぶつかって、またぐちゃりと嫌な音がした。
「さあ、新しいパーツを集めなきゃ!」
最初のコメントを投稿しよう!