最低な恋心。

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俺は気が付いたら車に乗っていた。 休憩を取りながら八時間半。 スマホで調べた【御影神社】に着いた。 そこそこ大きな神社。 立派な朱い鳥居が朝日をバックに光っていた。 徹夜した目にはその朝日の眩しさがきつかった。 俺は駐車場に車を停めて少し仮眠をとって参拝客が来る時間まで待って、サングラスと帽子を装着して軽い変装。 勢いで来てしまったけども、きっと見に来たとおもったら怒るだろうアイツは。 こそっと、そう。こそっと巫女姿を見たら帰ろう。写真も撮るけど。 俺は神社の人たちに紛れ込みたかったけど、頭一つ出るこの身長ではバレやすい。 物陰に隠れて少ししたら、ちょうどいい具合に観光バスが来た。 ラッキー☆ しかも外国人客じゃねーか。高身長も紛らわすなら高身長の中だ。 俺は観光客に紛れて神社内に入り、巫女姿の御影の姿を見つけた。 御影はバスガイドさんに挨拶をしてそして、流暢な英語で観光客相手に神社の歴史などマナーなどを説明していた。 ただ、その巫女姿は、俺の望んだ姿とはちょっと違う。 「――痩せたな」 笑顔で説明をしているが、声がいつもよりも掠れている。 きっと毎日、説明や接客でのどが枯れている。 目が少し赤いんじゃないか?寝不足なんじゃないか? 説明や案内が終わると、外国人客は巫女姿の御影と写真を撮ろうと頼んでバスガイドさんがそれを撮影する。 肩を組んだり、腰に手を回すやつもいる。 それにも嫌がることなく笑顔で撮影をする。 しばらくしてその撮影が終わると今度は大きな声がした。 「(あかり)!!案内が終わったなら売り場に戻りな!」 「…申し訳ありません。おばあさま。すぐに…」 あれが御影が言ってた祖母か。きつい顔して怒鳴ってやがる。あれが孫娘にする態度かよ。 「まったく!男に色目ばかり使って、本当に母親にそっくりだよ」 続けて言った言葉に御影は反論もすることなく。パタパタと草履で小走りに去っていった。
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