最低な恋心。

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「さいってい!!」 そう言われて頬をぶたれる事も一度や二度じゃなかった。 だけど誰かを庇ってぶたれたのは【初めて】だった。 俺はその日、ちょっと早めに来て食堂で朝めしを食べてから、二限の授業に出ようと。 余った時間を夏が過ぎた一番気持ちいい季節を楽しむために中庭でアイスを食べていた。 まだ授業中というのもあって、二限からの人がちらほら来ている程度。 ベンチでおしゃべりしたり、読書してたり。それぞれの時間の過ごし方を楽しむ。 そんな静かで心地のいい空間に似合わない言葉と音量が響いたのでソコに居た人間達は皆そっちに一瞬で視線を向けた。 「離して!!」 「お前だってムカついてるだろ!?一緒に仕返ししようって言ってるんだよ!!」 「関係ない!!」 「俺とほら…な?一緒にあいつらに仕返ししようぜ?」 「嫌っ!!」 「ほら!いいからコッチ来いよ!!」 物騒にも程がある会話にそこにいた風景と化した人々はポカンとしていたのだが、その対話してる人物たちが顔見知りであった俺だけが動くことが出来た。 「おい!!やめろって!」 俺がその言葉を言いながら、男が女を掴んでいた手を掴み返した。 その瞬間男が振り返る。その顔は俺も知っている。そして掴まれてた女は御影だった。 男は御影の親友の元カレ。 「……お前に関係ないだろ。引っ込んでろ!」 男は興奮状態になっていたと思う。ここが大学内であることすら解っていないのか。女を無理やり連れていく行為がどういう事か理解してない様子であった。 顔が赤く血管が浮き出るその顔は、まともじゃない。 体格的にも小柄の御影を無理やり引っ張って、どこかに連れて行こうとしていた。 「いいから、離せって!!」 御影の腕を男の大きな手が力いっぱい掴んでいるのが解る。 「っ!痛いってば!!」 御影は必死に腕を離そうとしているが、力いっぱい掴まれた男の手は女の力では振り払えない。 それでも御影は精一杯の抵抗をして男の手を引っ搔いた。 「!いってぇな!この野郎!!」 そう言って男が振り上げた手。その手に瞬時に小さい身体を更に強張らせた御影が見えた。 女にビンタをされた事はあるが、男にビンタをされたのは無かったな。 某アニメの「父さんにもぶたれた事無いのに!」というセリフでも言えれば笑えたのに。 俺は思ったよりも強い力で拳を受けて、よろめいた。 視界がチカチカする。星が見えるってこういうことか? 俺の視界がチカチカしてるとき下の方で何かが動いてるのは分かった。 「ぬおお!!ああああ・・・・」 気づけば男の断末魔のような唸り声が聞こえた。
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