最低な恋心。

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「危ないから送っていく」 大学からの事情聴取もあって遅くなった帰り道。 御影は一人で普通に帰ろうとしていたので、俺は流石に引き留めた。 「大丈夫だよ」 「阿呆か。ついさっきのアレ見て一人で帰せないだろう」 俺は気持ちがいい季節バイクで通学していた。御影にヘルメットを渡してバイクの後ろに乗れといったが、御影は動かなかった。 「乗れって」 「…乗ったこと無いから怖いもん」 渋い顔してそんな事言い出すものだから、俺は今日の緊張が吹き飛んだ。 「ゆっくり走るから乗りな」 「…乗り方わかんない」 そういう御影は、本当に渋い顔をしていた。 俺はバイクから一度降りて、ヘルメットを御影にかぶせてベルトを調整してやり、150センチ程度の小柄の御影を持ち上げて後部席に乗せた。 「お、軽いな」 見た目通り軽い御影を乗せると、御影は一生懸命椅子に座っていたようだった。 俺は再びバイクに跨り、御影の手を取って腰に回させた。 「ちゃんと掴んでろよ」 「…わかった。ゆっくり走ってね」 御影の身体からの想像とおりの小さい手が一生懸命俺の服を掴んだ手を確認してから俺はエンジンをかけた。
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