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スーパーに寄ってもらった。明日からの食料品買わないと。
「そんなに買わんでも、食いもんはたくさんある」
「でも、おじさん食べた分は減ってるでしょ?」
「減ってない」
「…ご飯、食べてないの?」
「カップうどんとレトルトの粥は食った」
「おじさん!」
六月に一弘さんが結婚してから、やっと食欲戻ってきたと思ったのに!
「ボクが帰ったからには、美味しいご飯しっかり食べてもらうからね!」
「それより、高校のことは話し合えたのか」
「……うん。ママは『こっち帰ってきなさい』ばっかりだったけど」
寝る前に、パパと二人きりになって相談した。
「ボク、千葉の美味しいご飯を楽しむことだけでも、ウチでやりたかったの。だから、スカートもはかなかったし、ママに怒ったりもしなかった」
「そうだね。ご飯三食作って、ママやおばあちゃんに優しくして、えらかった」
「でも…やりたいこと、一つに絞っても、たったひとつでも、ウチでは出来なかった」
「…そうだね」
「おじさんちでは、ウソつかなくていい。それもすごく大変だけど……なんか、こう、嬉しいし、楽しい。ボクが料理もスカートも好きなこと、分かった」
「そうか」
「だから……」
おじさんをまっすぐ見る。
「ボク……高校も北海道に…おじさんちにいたい。いてもいい?」
おじさんは、しばらくボクを見て、買い物カートに目をそらした。
「…俺んちで、いいのか」
「うん」
「…そうか。好きにしろ」
「ありがとう! おじさんのいる高校に入ってもいい?」
「それは、お前の成績次第だ」
荷物を持って、アパートの階段を勢いよく上がる。
「おじさんこれ以上やせないように、ボク美味しいご飯たくさん作るからね!」
「少しでいい。そんな入らん」
「もう夜だよ? お腹すいてないの?」
「昼にあんだけ食えばな。むしろ胃薬が欲しい」
「えー…じゃ、晩御飯は柔らかいうどんにするね。ただいま!」
帰ってきた。
そんな気がした。おじさんちなのに。
(了)
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