私にも恋愛は出来ますか?

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今までの私は生きることに必死で、恋をする時間なんてなかった。 まるで私の人生はご飯とおかずだけの生活。 それだけあれば生きていくのに支障はない。 恋はデザートで、私にとっては贅沢品。 周りから囁かれる恋の話を聞くだけで私は満足していた。 私にときめきを与えてくれたのは奈穂で、奈穂は高校の頃お勧めの少女漫画を貸してくれたし、無料の漫画アプリも教えてくれた。ひと時の楽しみになった。 いつしか私も〝素敵な恋がしたい〟と願うようになった。生活に彩りを与える存在を求めた。 しかしこの歳になると周りは恋愛経験者ばかり。 〝推し〟とやらを見つけようとアイドルを嗜んでみたけれど、私のようなタイプがおたくになったら散財するからと止められた。 「(でも、小林課長はいつも優しいし、気遣ってくれるし、みんなに分け隔てないし、それに……中学の時に好きだった初恋の人にどことなく似ている……)」 もう手に入らない時間を求めるかのように、私は小林課長に憧れを抱くようになった。 「そうだ。日和、手っ取り早く彼氏作ってみたら?」 注文のついでみたいに朱希は言った。
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