Phantom

1/2
前へ
/10ページ
次へ
 ——睡眠薬は星の欠片で、じょうずに噛めたら星屑になるんだよ。  そう教えてくれたのはあなただった。  彼が噛んだ星屑を唇から唇に注がれたとき、このうえない高揚感におそわれたことをよく覚えている。 「(すい)を殺せるのは、ぼくだけだからね」  吐息の隙間でじとりと湿った視線が絡み合う。背徳感に神経細胞が焼き切れる感覚がして、あまくて、きもちよくて、だけどほんのすこしだけかなしかった。  これから、ふたりでしぬつもりだった。心の中、と書いて心中、と読むその言葉は、行為のうつくしさをよく反映していた。  人間嫌いのあたしたちの楽園は永遠になるはずだった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加