過去〈可哀想〉

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高校に入学し、若の命令通り栗原円香の監視役をやって気づいたことがある。 この女、相当な馬鹿だ。 黙って若の言うことを聞いておけば酷い目に合わされないというのに、悉くそれを破る。 いい加減にしてほしいね、ほんと。 くだらないことをいちいち報告させられるこっちの身にもなれっての。 それで若に乱暴されたせいか知らないけど、いっつも人目を避けて泣いているのを監視役の俺が知らないはずないのに、必死に隠そうとするから、無意味なことしてんなぁ、と冷めた目で見ることしか出来なかった。 俺は栗原円香と仲良くしているつもりは毛頭ないのだが、何故か栗原円香は巳波くん巳波くんと俺ばかりに話しかける。 若に男と話すなって言われたんだろーが。 頭沸いてんのか。 俺がどんなに冷たくしても話しかけてくるのをやめなくて、俺が若に殺されたらお前のせいだからな、と心の中で栗原円香に悪態をついた。
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