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小学5年生での自然教室は、県内の山での活動だった。
小雨と曇り空を繰り返す中、皆で山道を歩いた。
怪我をしたわけでも痛いわけでも無いのになぜか、足首から血を流す生徒が続出した。
山中の宿泊施設に到着。
3階の女子8人部屋で、誰かのレイコートに付いてきた『山ヒル』が床を這う。
ーーー流血騒ぎはコイツの仕業か。
皆が嫌がり泣き叫ぶ中、私はストローでソレをすくい、窓の外に投げ捨てた。
ストローと『山ヒル』が宙を舞う。
手を離すつもりは無かったストローが落下し、『山ヒル』は見事な弧を描いて空中浮遊を披露する。
「ただいま〜」と言わんばかりにソレは、私の眼鏡のフレームに着地した。
良かった、良かったと安堵する皆を背に、私は山中に響く叫び声を上げた。
(おしまい。山ヒルは羽が無くても飛べるんだと思う)
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