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どうにもこうにも、この雰囲気は苦手だ。
ミオンさんも一緒にいてくれるって約束をしてくれたのに、こんなことになるとは。
いや。いやいや、ミオンさんの性格なら、こうなるって考えておくべきだったのか。
「わたしよりも頭の良いミヤシロさんなら、もう分かっているかと」
「かなり評価してくれているようでうれしいけど、この病院であった殺人の話を聞かされても。その意図が理解できないな」
同じような名前の男女の話を聞かされてもな、と言うほうが適切かね? そうミヤシロさんが唇を動かしている。
「もしも、わたしとつき合うことになったら食べられちゃうかもしれませんよ」
「オツノにだったら食べられても良いがな。幸せそうに食べてくれるだろうし」
「えっと、今のはうそです」
「おう。知っているよ」
わたしをからかっている訳ではないと思うが、ミヤシロさんは楽しそうにしていた。
「冗談はさておき。オツノが言いたいことはなんとなく分かるけどさ。おれがそれをかなえてやる義理も理由もないからな」
前にオツノに伝えたことがおれの願いってやつなんだ。それをどうにかしたかったら、そっちも本音をぶつけてくるのが筋じゃないか? とミヤシロさんが続けている。
「また、殴られるかもしれませんよ」
「あのていど、スキンシップの範囲だろう。それに強引すぎたのは、おれのほうだし」
こうしておけば、あの時みたいに顔を殴られる心配もないんじゃないか。そう言って、ミヤシロさんがわたしの両手を包みこむように握りしめていた。
「それとさ、普段みたいにそろそろ目を合わせてほしいんだけどな。男として意識をしてくれているのはうれしいが」
「男性として、意識なんかしてませんよ」
「それなら、おれと目を合わせられるはずだけど。普段と同じようにさ」
「その、うそでした」
「へへっ、それも知っている」
目を合わせようとしているのか、ミヤシロさんがわたしの顔をのぞきこもうとしているので。
「ミオンさんのことは良いんですか?」
そんな質問をしてみた。
意地悪だったかもしれないけど、ミヤシロさんも同じようなことをしているんだから、お互いさまのはず。
「やっと、らしくなってきたな。ミオンとはもうおわっている。それに振ってきたのは、あっちのほうだし」
「それなら、ミヤシロさんは」
「好きとか、きらいとかの話じゃないんだ。おれとミオンは、根本的なところが合わないみたいでね」
「なんとなく、分かります」
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