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わたしはタカセくんをおき去りにして、中華料理が並んでいるテーブルのほうへと。
エビチリ、麻婆豆腐、ピータン、点心、餃子。他にも名前の分かるものや分からないものが色々と。個人的には拉麺を食べたかったが、なさそうだな。
その代わりに担々麺でも、と思ったけど。においやらが気になるので手軽そうな点心にかぶりつくことに。中身は豚の角煮だった。
中華料理が並んでいるテーブルの前で二つ目の点心を食べていると、後ろから名前を呼ばれた。
どことなく聞き慣れている声なので、振り向くのはいやだったが。なん回も呼ばれるほうが面倒だしな。
そしゃくをしている点心で頬をふくらませながら振り向くと、にやついているカミシロマヤが立っていた。パーティだからかフィッシュテールドレスを着ている。
カミシロさんの数歩、後ろに立っている紳士服の男性が笑顔でこちらを見つめてくれているがその瞳の奥はどす黒いように見えた。
カミシロさんの彼氏と言うよりは、つき添っている人って感じがする。
両目の下にある、それぞれの黒子を交互に見ながら。
「お久しぶりですね。カミシロさん」
と、軽く会釈をしておいた。
「ふふっ。相変わらず面白い表情で」
口もとを右手で覆いつつ、カミシロさんが楽しそうに笑っている。特に面白い顔つきをしているつもりはないのだが、笑いのつぼは人それぞれだからな。
「えと、覚えていてくれたんですね。わたしのことを」
「もちろんよ。中学で友達と呼ぶことができる人間は、カナデさんだけでしたから」
はて、カミシロさんとは友達って関係だっただろうか? 確かに、なん回か会話をした記憶はあるけど。こう、仲良し! って感じのエピソードはなかった気がする。
なんて考えつつも、わたしは二つ目の点心を食べ切って、三つ目の点心に手を伸ばしていた。
「わたくしが思っているよりもパーティを楽しんでもらえているようで?」
「そうですね。趣旨である異性交遊のほうはあんまり興味ありませんけど」
今回のパーティの趣旨を簡単に説明すると豪華な合コンって感じだと思う。
メンバーは、わたしを含めて八人だけで、こんなノアのはこ舟みたいなものを使うんだから特上の遊びは桁が違っていた。
「そもそもカミシロさんほどの美人なら、こんなパーティを開く必要がないのでは?」
「カナデさんは合コンのようなものと勘違いされているようですけど。わたくしは今回、招待したメンバーとコネクションをもつために、このパーティを開催したんですよ」
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