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人材は全てに勝る宝ですから、とカミシロさんが上品に笑っている。
「もちろん、カナデさんもその一人。だからこそ、わたくしは覚えていたんですよ」
明らかなうそをつかれてもな。今回、わたしがこのパーティに参加できたのはカシハラくんがつき添いとして誘ってくれたからなんだし。
「ですが、カナデさんの言うように殿がたとの歓談を楽しむのも一興。中学の時みたいに手玉に取るのも良いかもしれませんね」
カミシロさんが柏手を打つと、神さまの代わりに紳士服の男性が茶色の封筒を渡してきた。
「賄賂ですか?」
「ご冗談を。夕食の後のゲームに必要なアイテムですよ」
推理ゲームのようなものなので、考える時間は平等にするべきだと思いません? と遠回しに今は封筒を開けないように的なことをカミシロさんが続けている。
「それでは、また後ほど」
軽く会釈をすると、カミシロさんと紳士服の男性は他のメンバーがいるところに。多分だけど封筒を配りにいったのだろう。
なんにしても、色々と疲れてしまうな。
茶色の封筒を二つおりにして、スカートのポケットにしまい。点心にかぶりつきながら次の料理を選ぼうとしていると。
「カナデちゃん!」
パーティに相応しくない大声とともに後ろから勢い良く抱きしめられた。声で、誰が近づいてきているのかは分かっていたけど、身体はびっくりしているようで震えている。
「ミオンさん」
お腹に巻きつけられている両腕を気にしつつ、後ろに立っているミオンさんの顔を見上げていた。
「んー、そっかそっか。一人でさみしかったんだね。カナデちゃん」
わたしの唇が勝手に動いたんだろうか? 一言もそんなことを口にしたつもりはないような。
でも、ミオンさんがうれしそうにしているので言わぬが花か。
「お、点心だね。カナデちゃん食べさせて」
あーん。と、ミオンさんが口を大きく開けている。わたしを抱きしめなければ好きなだけ食べられそうなのに。
そんな風に思いながらも、わたしもこの状況を楽しんでいるのか点心をミオンさんの口の中に運んでいた。
「うん。甘くて、美味しい」
「プロのかたがつくってますからね」
「もう、カナデちゃんはすぐにドライなことを言うんだから」
けど、そんなところがカナデちゃんの魅力だよね。なんて言い、ミオンさんが普段と同じように頬ずりをしていた。
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