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「それで、そちらのかたは。ミオンさんのつき添いですか?」
頬ずりを続けているミオンさんの後ろに立っている男性のほうに視線を。
身長がミオンさんよりもさらに高く、ひねくれたくせ毛をしている。手足も長くて、なにかの雑誌のモデルみたいだな。
「ん? ああ、そうそう。あたしのつき添いと言うか腰巾着だね」
「おいおい。酷い紹介だな」
不満そうに話しているが、くせ毛の男性的には慣れているようで軽く笑っている。
そのくせ毛の男性の名前はミヤシロシクラで、ミオンさんの彼氏さんだった人らしい。
今のところ、恋愛やらをしたことがないわたしだから変だと思うのかもしれないけど。そんな関係ならば、あんまり会いたくないのが、これも言わないほうが良さそうだな。
そんな風にわたしが考えているのが、なんとなく分かってしまったのか。
「招待状をよく読んだらさ。つき添いは異性限定って書いてあってね。それで頼みやすいこいつを選んだの」
そう言った後でミオンさんが、あたしが一番好きなのはカナデちゃんだよ、と耳もとでささやいていた。
「そうだったのか。てっきり、よりを戻してくれるつもりなのかと」
「ばかじゃないの」
「あはは。そうだな」
思っているよりも仲が良さそうですね、と言おうとしたがミオンさんにお腹をくすぐられて、変な声しかでてこない。
「ミオンさん、やめてくれませんか」
「本当にそう思っているの? あたしには、もっと触ってほしそうに見えるな」
ミオンさんはカナデちゃんを困らせたい病を抱えているとかなんとか、言っていたような。それがうそなのは確実だけど、悪意ではないことも。
「近くに男性もいますから」
本当にそんなことを思ってなさそうなのが伝わりそうな棒読みだったけど。ミオンさんのなにかには触れることができたようで。
「そうだね。ごめんごめん」
なぜかうれしそうにしているミオンさんがさらに強く抱きしめてきていた。
そんなわたしのほうに、ゆっくりとミヤシロさんが近づいて顔を見下ろしてきた。なにかがついているのだろうか?
「なにか、ついてますか?」
口もとをハンカチで拭ってみるが、なにもついていなかった。多分、手伝ってくれたんだろう、ミオンさんがわたしの頬をなめている。
「いや。可愛い顔をしているな、って思っただけ」
「あー、ありがとうございます」
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