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「あら、酔わせないと女の子の一人も口説けないのかしら? 色黒のきみは」
「いや。酔っているオツノちゃんが魅力的だから、残念ってことだよ」
もちろん、普段のオツノちゃんも魅力的。そんな台詞を口にしつつ、椅子をもっているタカセくんがこちらに近づいてきていた。
「ありがとうございます」
「オツノちゃん。耳、赤いよ」
わたしとツチウラくんの間くらいに椅子をおいているタカセくんが、耳のほうに手を。
思わず、跳び上がるように身体を動かしてしまい、椅子が倒れてしまった。
先ほどミオンさんとミヤシロさんに遊ばれたせいで、身体が拒否反応を起こしてしまったのかな。
「ごめんなさい」
ウェイターさんがもとに戻してくれた椅子に、わたしはゆっくりと座りなおした。
少しすると、不思議そうな表情をしていたタカセくんが笑みを浮かべている。ばれてしまったかもしれない。
「意外と、あざといんだな」
赤っぽいチーズをつまみながら、ツチウラくんがなにかを言ったみたいだが、わたしのところまでは聞こえなかった。
「チーズを食ってないで、ツチウラもこちらの美女達と楽しく会話しないか?」
「それもそうだな。その美女達に悪い虫がつかないようにするのも面白そうだ」
「おいおい。誰が悪い虫だよ」
個人的には、なかなかの口の悪さだと思うけど。タカセくんは気にしてないのか、ツチウラくんに軽くつっこんでいる。
「二人は、仲が良いんですね」
「ツチウラとは親友だからさ」
「こっちは腐れ縁だと思っているけどな」
おいおい、相変わらず冗談がきついぜ。とでも言いたそうにタカセくんがツチウラくんに笑いかけていた。
そう言えば、わたしの部屋でタカセくんがカシハラくんと悪友とかなんとか。
「そうだ。ジンもこのパーティーにきているんだが、ツチウラは会ったのか?」
「いや。部屋で眠っていたからな」
「ジンは、ツチウラに会いたがっていたぜ」
「そうか」
面倒になりそうだな。と、ツチウラくんが小さい声で言っていたような気がした。
「それはそうと、オツノちゃんのことも一つ知れたことだし。楽しくなりそうだね、このパーティ」
「なんのことでしょうか?」
「うそが下手だね。オツノちゃんは」
ごまかすように赤っぽいチーズを食べて、水を飲む。そんなわたしの姿を横からアカイさんが笑顔で見つめていた。
「えと、なんでしょうか?」
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