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「そんなに名高い人なんですか? ミヤシロさんって」
「まあ、そうだね。リンソウ大学のシックスセンスみたいな存在って説明するのが一番、分かりやすいかな」
「頭が良いんですね」
わたしがそう言うと、カシハラくんはなぜだか複雑そうな表情に。
「あれ、間違ってましたか?」
「いや。オツノさんらしい答えかただな、と思っただけだよ」
ほめられている感じはしないが。悪口でもなさそうだし、気にしないでおこう。
「それじゃあ、ミヤシロさんもついてくるのは二人とも良いんですよね?」
「ああ。オーケーだよ」
「にぎやかなほうが楽しいからね」
タカセくんとカシハラくんがそれぞれに、わたしの疑問に答えてくれている。
二十分後くらいに、三階にあるレストランの前で待ち合わせをすることに。一旦、別れようとするとタカセくんがわたしに近づいてきた。
「オツノちゃん、耳を貸してくれる?」
カシハラくんに聞かれたくないことなのかタカセくんがそんなことを言っている。
「これで良いですか」
できるだけ声を小さくしつつ、タカセくんのほうに右耳を向けた。
「可愛い耳をしているね、オツノちゃん」
そんな冗談を言った後で、タカセくんが。
「ジンには気をつけてよ。特に夜中に、二人きりになるようなことは絶対にやめたほうが良い」
普段とは違う、真面目な声音でそんなことを忠告してくれている。
「ほらっ、オツノちゃんのきれいな髪の毛にこんなのがくっついていた。気をつけないと駄目だよ、せっかく可愛いんだからさ」
「ありがとうございます」
全くよどみのない、うそだったので思わず目を見開いてしまう。
「なにが髪の毛にくっついていたの?」
タカセくんがはなれると、入れ替わるようにカシハラくんが近づいてきた。
「えっと、幽霊がくっついていたとか」
「そうなんだ。オツノさんは面白いね」
冗談を言ったんだと思われたようで、カシハラくんが笑っている。顔立ちのおかげか、女の子みたいに見えていた。
ミオンさんの部屋の扉をノックしたが反応がない。まだ眠っている可能性もあるので、スマートフォンを鳴らそうとすると。
「おう。おはよう、オツノ」
大きく欠伸をしているミヤシロさんがゆっくりとこちらに近づいてきていた。
「おはようございます。ミヤシロさん」
そう、普通に挨拶をしたつもりなのだが、ミヤシロさんが不安そうな表情でわたしの顔をのぞきこんでいる。
「なにか?」
「いや。まだ怒っているのかな? って」
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