ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 中編

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 怒っている? なんのことだろうか、ミヤシロさんから変なことをされた覚えはないんだけどな。 「もじゃもじゃのミヤシロさんに、変なことをされた記憶がないような」 「おれのもじゃもじゃ頭はさておき。昨日のことだな。ミオンと二人でさ、オツノの頬を触らせてもらっただろう」  そう言えば、昨日の夕食の時間にミヤシロさんに頬を触られたんだっけな。 「別に気にしていませんよ」 「表情がないから分かりづらいな。と、これも失礼だよな。悪い悪い」 「いえ。よく言われたことなので、特には」  本当か? とでも言いたそうな表情をしているミヤシロさんが見つめている。しばらくの間、だまっていると右の頬をつままれた。 「謝ったばかりのような?」 「このやわらかな頬の感触が忘れられなくてね。いやだったら、パンチなりキックなりをしてくれ」  個人的には頬を触られるくらいで殴ったり蹴ったりはできないな。 「抵抗しないのか?」 「わたし的にはスキンシップの範囲なので。パンチやキックをするほどではないかな、と思って」 「寛容なんだな、オツノは」  つまむのをやめると、左右の頬にそれぞれミヤシロさんの大きな手の平が触れている。  耳に指先が当たらないか気にしているせいなのか、なんだか心細い。声をだそうと顔を動かすと、ミヤシロさんと目が合った。 「やっと、らしい反応を見せてくれたな」  楽しそうにミヤシロさんが笑っている。 「あの、やめてくれませんか」 「ん、なにをだ? おれはミオンやツチウラと違って探偵役には向いてないタイプの人間だからさ」  ミヤシロさんのみぞおちの辺りを、わたしは軽く殴っていた。 「へへっ、悪い悪い。いやがってたんだな」  なんて謝りつつも、わたしの頬をつまんだままでいる。全く反省をしてないように思うのは、自覚なしに怒っているからかな。 「ところで、ミオンさんがどこにいるか知りませんか? 部屋にいないみたいで」 「ミオンだったら、おれの部屋にいるけど」 「仲良しなんですね」 「ああ。昨夜から一緒だしな」  ミヤシロさんがにやついている。目を逸らそうとするが、彼もサディストらしい。 「わたしをいじめて、楽しいですか?」 「いじめているつもりはないんだがな。反応が面白いから、からかいたくなるだけで」  頬が熱くなっているな、とミヤシロさんがささやくように口を動かしている。 「からかいすぎたな、悪かった」  わたしの耳もとでそう言うとミヤシロさんは頬をつまむのをやめて、頭を軽くなでた。 「それで、ミオンになにか用があるのか?」  カシハラくんとタカセくんに朝ご飯を一緒に食べるように誘われていることをミヤシロさんに説明。
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