ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 中編

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「ふーん。でも、ミオンならその誘いを断ると思うけどな。多分」 「どうしてですか?」  ミヤシロさんが表情を曇らせている。 「説明しないと駄目か? おれ、そっち系の話は苦手なんだよな」 「それなら、別に良いです」 「ミオンが世話を焼きたがる訳だな」  なぜかは分からないけど、ミヤシロさんがわたしの耳に触ろうとしたので思わず避けていた。 「耳だけは触られたくないんだな」 「いきなり触ろうとしたんですから、誰でもそうなるかと」 「それもそうだな」  軽く笑うと、ミヤシロさんがわたしの頬を指先でつまんでいる。病みつきになるほど、良いものでもないような。 「おれが言うのもなんだが、ミオンと仲良くしてやってくれ」 「分かりました」 「できることなら、おれとも」 「それは、少し考えさせてくれますか」  怒らせてしまったのか、とミヤシロさんが楽しそうに唇を動かしている。 「おれと仲良くしてくれるのなら後でお菓子をあげるんだけど?」 「ダンディシガーがもらえるのなら、考えてあげなくもないですよ」 「オツノは良い趣味をしているな。おれも、ダンディシガーは大好きだ」  それじゃあ、夕食の後にでもそれをプレゼントさせてもらうことにするかな。そう言うとミヤシロさんはどこかにいってしまった。多分、ミオンさんが待っているであろう自分の部屋に戻ったんだと思う。  ミヤシロさんの大きな背中を追いかけても良かったけど。彼氏だった人がミオンさんは断ると判断したんだから、本人に聞きにいく必要はないか。  もしかしたら、今からあの二人は。  なんにしても、仲良くしているミオンさんとミヤシロさんの邪魔をするのは野暮か。  風邪を引いてしまったのか頬が熱くなっているのを気にしつつ、約束をしたレストランのほうに向かっていた。  約束の時間よりも少しはやいと思っていたのだが。三階のレストランの前には、すでにカシハラくんが待っていた。  けど、タカセくんの姿がないな。トイレにでもいっているのかな? 「あ。オツノさん、こっちこっち」 「遅れて、ごめんなさい」  手招きをしているカシハラくんのほうに、足ばやに近づいていく。 「謝る必要なんてないよ。まだ、約束をしていた時間よりもはやいんだし」 「一応、気分的なことですかね」 「オツノさんは真面目だな」  女の子みたいに可愛い笑みを浮かべているカシハラくんに、タカセくんはトイレに? と聞いた。 「いや、タカセはこないよ。アカイさん、に呼ばれたとかでパスをするとか」  意外と言うか、アカイさんとタカセくんは知り合いだったのか。それならば、ツチウラくんをこの船に招待したのは。
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