ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 中編

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 カシハラくんの質問に思わず、首を傾げてしまった。今の話のながれで、どうして恋愛めいたことを聞いてきたんだろう。 「人間としては、好きですかね」 「あー、そっか。ごめんね。変な質問して」  ツチウラは命令をできるんだから、着させられたってところかな。と、カシハラくんが独り言を口にしていた。  雑談をしながら、朝食メニューと言う欄に書いてあった。イングリッシュブレックファスト? なんて名称のイギリスの料理を頼むことに。  カシハラくんの豆知識によると、この料理はイギリスの代表的な朝食と言う名目だが、あんまり食べられてはないとか。  その情報が正しいのかどうかはさておき、わたしもカシハラくんも人間なんだから。話半分に聞いておくのが一番なんだと思う。  特に、今は。  イングリッシュブレックファストを、店員さんがもってきてくれた。  トースト、ベーコン、スクランブルエッグにポテトサラダ。それにソーセージなどが、一つの皿の上に並んでいて、ごきげんな朝食って感じかな。 「確か、この船の施設を利用した時の料金はカミシロさんが全て負担してくれるんでしたよね?」 「そうそう。だから、今回みたいなパーティに呼ばれるために、カミシロさんに近寄ってくるやつもいるとか」  それなりに面倒で、少し孤独を感じることがあるらしい。とカシハラくんが話を続けている。  カシハラくんも財閥系の人間だからこそ、カミシロさんの苦労みたいなものが分かるんだろうな。 「そうなんですか。人気のある人は、色々と大変ですね」 「オツノさんは良くも悪くも、そんな基準で相手を判断しなさそうだね」  別の基準みたいなものはあるので、わたしも同じ穴のムジナだとは思うけど、言わぬが花か。  言ったところで、あんまり意味のないことかもしれないが。  朝ご飯を食べおわって、紅茶を飲んでいると。 「一階に図書室があるみたいなんだけどさ、いってみない?」  カシハラくんがそんな提案をしてきた。 「図書室、ですか」  この船にしかない貴重な本があるとかないとか言っていたけど、カシハラくんと一緒にいく理由がない。  カシハラくんと一緒にいきたくない、って理由のほうもないが。  個人的には朝食を一緒に食べたことで義理は果たしたと思うしな。  わたしの反応が芳しくないと判断したからか、カシハラくんがあれこれと図書室の魅力を並べ立ててきている。 「まあ、ヒマですし。わたしも読みたい本が見つかるかもしれませんので」  結局、カシハラくんに押し切られるような形で図書室に向かうことになった。
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