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ミヤシロさんが引っこめようとした黒い箱を奪い取ろうとしたけど。わたしの手の届かないところまで、もち上げられてしまった。
ジャンプをしても、黒い箱を奪い取れそうにはないな。
「もってきてくれたのでは?」
「そのつもりだったが誰かがうそをついたりするからな。気分が変わっちゃった」
顔をにらみ上げているつもりなのに、ミヤシロさんは楽しそうに笑っている。
「それに約束した時間は夕食の後だからな。今、オツノにダンディシガーを渡さなくても良いからな」
「そうでしたね。それでは、ミヤシロさんと仲良くする話もなかったことにします」
ダンディシガーをもらうのを諦め、ホールのほうに向かおうとすると。ミヤシロさんがわたしの前に回りこんできた。
「おれが悪かったよ」
ミヤシロさんが黒い箱を差しだしているが引っこめるつもりなんだろうな。
「わたしを甘く見ないでほしいですね。ダンディシガーをもらったくらいで、仲良くするつもりはありませんよ」
「夕食前だから、あんまり食べるなよ」
「お菓子は別腹なので、平気です」
わたしがダンディシガーを食べているのを見ていたかと思うと、ミヤシロさんが。
「ミオンと一緒に、おれの部屋にくるつもりはないか?」
変な質問をしてきた。口説かれているって感じでもないし。
「わたしがミヤシロさんの部屋にいっちゃうと、せっかくのムードが悪くなるような」
それに、これ以上は言う必要はないのか。可能性だけなら、ミヤシロさんの部屋にいくことが全くないとも。
「そもそも今日のゲームでまた最下位になるかもしれませんからね。ここで約束をしても意味が」
「部屋に連れこみたかったら、おれかミオンがゲームで一位になれ、ってことだな」
「わたしを食べても美味しくないかと」
「勝手に食人鬼にしないでくれ」
都合の悪い時は、そんな風に話を逸らすんだな。みたいな顔をしているミヤシロさん。
ぬれ衣にもほどがあるな。わたしは負けずぎらいだから、どんなことでも全力で勝負をするのに。
「ミヤシロさんが、わたしが確実にゲームで最下位になる。なんて決めつけるからです」
「分かった分かった。悪かったよ。もしも、オツノが今日もゲームで最下位で。ミオンかおれのどっちかが一位だったら、部屋に連れこませてもらうってことだな」
「ダンディシガー以外のお菓子もあったら、うれしいと思います」
「やっぱり、うそつきだな。オツノは」
ダンディシガーを半分くらい残しておき、ミヤシロさんとホールに向かっていく。
夕食の後で、わたしの最下位が決定するとミヤシロさんはやっぱりそうだよな、とでも言いたそうな顔をこちらに見せていた。
今回のゲームは白熱していて、わたし以外の誰が一位になるのか気にはなっていたが、それよりも。
パーティのメンバーの一人である、アカイさんの姿がないことのほうが、わたしは気になっていた。
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