ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 後編

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ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 後編

 昼休み。オツノカナデはヨクナリ中学校の屋上で、お弁当を広げている。天気も良く、暖かな空気に包まれつつ玉子焼きを頬ばっていると、足音が近づいていく。  屋上のはしっこのほうで、うれしそうに頬をふくらませているカナデを、遠巻きに見ている生徒達を嘲笑うかのようにカミシロマヤは話しかけた。 「カナデさん、ごきげんよう。わたくしも、一緒に食べさせてもらって良いかしら?」 「別に、良いですけど」  なにかを探しているのか、カナデがマヤの周りを身体を揺らしながら見ている。 「どうかしました?」 「カミシロさんとキスしていた制服を改ぞうしている人がいないと思いまして」 「誰のことですか? そんな人と、わたくしはつき合っていた覚えがないのですが」 「そうですか」  わたしの気のせいか、とでも言いたそうな顔をしながらカナデはハンバーグを口の中に運んでいる。 「本当、幸せそうに食べるわね」  マヤの声が聞こえなかったようで、その隣に座っているカナデが、とても不思議そうに首を傾げていた。 「食べることは好きなの?」 「はい。きらいなものがないので、なんでも食べられますし」  今まで食べてきたものは全て美味しかったですね。と、カナデは唇を震わせている。 「カナデさんは食べてきたもの全てに感謝をしているのね」 「そんなに、きれいなことでもないですよ。そう思わないとやってられないだけかと」  カナデの今の言葉を聞いたからか、マヤが驚いた表情をしている。笑ってしまうようなことでも思いだしたのか唇のはしっこをゆっくりと上げていた。 「カナデさんでもやってられないと思うことがあるなんて、驚かされたわ」 「はあ。ま、わたしも人間ですからね。それなりに悩みの一つや二つはありますよ」 「例えば?」 「例えば、ですか」  どうして、そんなことを話さなければならないのだろうか? とでも言いたそうにしていたが。 「肌が白くて幽霊みたいだな、とか」  カナデは律儀に答えている。 「コンプレックスって、他人からすると自慢に聞こえてしまう場合もあるのね」 「肌が白いと吸血鬼に襲われなさそう、とかですかね?」 「こんな天気の良い日に、吸血鬼も襲いかかってこないでしょう」 「それもそうですね」  会話をできているはずなのに、かみ合ってないような気がするからか、マヤは額の辺りを指先で押さえていた。  深く考えることをやめたらしく顔を左右に軽く振り、マヤはもってきていたポーチから弁当箱を取りだして。  カナデは目を丸くし、箸で挟んでいた白飯をこぼしている。  自分とマヤの弁当箱の大きさを比べているようで、カナデは交互に見ていた。  マヤの小さな弁当箱を見て、お腹が空いてしまわないか心配になったのか、エビフライを箸でつまみ。 「良かったら、どうぞ」  カナデは、隣に座っている彼女の口もとにそれを近づけていた。
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