ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 後編

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「この間?」  首を傾げているカナデに、マヤがその時のあやまちのことを言っているみたいだけど、なぜか声が聞き取りづらい。 「わたしは気にしてませんよ」  なんのことか分かってないような顔つきをしているがカナデはそう唇を動かしている。 「わたくしは気にしているんですよ。もしもカナデさんに」  途中で話すのをやめ、マヤは大きく左右に首を振り。先ほど、カナデにあげたのと同じ赤いエビを自分の口の中に運んでいた。 「そうよ。謝罪だけじゃなく、なにかカナデさんの願いをかなえるのが筋ってものよね」 「筋、ですか」  思わぬ展開に戸惑っているのか、カナデがなにかを言いたそうにしている。 「えっと、わたしは気にしてないので。その願いやらなんやらは別に良いような?」 「それこそカナデさんが気にする必要のないことよ。これはわたくしなりのけじめのつけかたみたいなものなんだから」 「カミシロさんが、そう言うのなら」  マイルールと言うのか、マヤの考えかたを否定する理由もないからか、カナデは要求のようなものを聞き入れていた。 「それで愛しのカナデさんはわたくしにどのような願いを?」  そう言われて、わたしは。  今、改めて考えてみると。確かにカミシロさんの言っていたように、友達だったのかもしれないな。  だからこそ、あの時に。 「くつろぐのは良いが、男の部屋のベッドで寝転がっているってことを忘れるなよ」  ベッドの上で寝転がったままで、声のしたほうに視線を向けると、座っているツチウラくんの背中が見えた。  本でも読んでいるからか、少し前のめりになっているような気がする。 「おはようございます」 「ああ。おはよう」  ゆっくりとベッドの上で身体を起こしつつなんとなく自分が着ている服を確認。 「なにをしているんだ?」  ベッドの振動で、わたしが動いていることが分かるのか。背中を向けたままでツチウラくんが聞いてきている。 「あー、えと。こんなメルヘンチックな服を着ることになるとはな、と思いまして」  赤い頭巾を被っていて、オオカミを。 「似合っているぞ」 「ん?」  わたしの気のせいか、ツチウラくんのほうから声がしたような。 「ツチウラくん、なにか言いましたか?」  そんな質問をしつつ、ベッドの上に座っているツチウラくんの傍らへと、四つんばいで近づいていく。 「ああ、悪いな。このレコードの日記を読ませてもらっていたんだ」  本を読むのに夢中になると、書かれていることを口にしてしまう時があるんだ。そう、ツチウラくんが説明をしている。 「そうなんですね。話は変わりますが、この船にのって、今日でなん日目でしたっけ?」  ツチウラくんの隣に座りながら、あんまり興味のないことを聞いていた。寝起きで頭が混乱しているのかな。
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