ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 後編

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 朝ご飯を食べようとツチウラくんと一緒に三階のほうに向かっていると、踊り場でカシハラくんと遭遇した。  階段を下りてきているので、カシハラくんはもう朝ご飯を食べおわったのだろう。 「おはよう、オツノさん。それとツチウラ」 「おはようございます」 「ああ。おはよう、カシハラ」  個人的には、ついでに挨拶をされたような気がするのだが。ツチウラくんの表情が全く変わってないので通例らしい。 「それにしても、仲が良いようで?」  わたしとツチウラくんが恋人みたいに手をつないでいるからか、カシハラくんが笑みを浮かべている。 「カシハラくんの言う通り、ツチウラくんとは仲良しですね」 「ふーん」  カシハラくんが唇をとがらせて、いじけているような。 「えと、カシハラくんも好きですよ」 「あはは。ありがとう」  しばらくして笑うのをやめると、カシハラくんがツチウラくんのほうに目を向けた。 「パーティ、楽しんでいるみたいだな」 「楽しまないと損だからな」 「もしかしたら、最後になるかもしれませんからね」  言葉足らずだったのか、変なことを言ってしまったのか、ツチウラくんとカシハラくんがわたしのほうを見ている。 「ほらっ、この船が沈んじゃう可能性もありますし」 「そうだな。すぐ近くに殺人鬼がいて、殺されてしまう可能性がないとも言えないしな」  ツチウラくんの台詞で思いだしたようで、カシハラくんが。 「そう言えば、レコード日記。だったっけ、面白かった?」  わたしに聞いてきていた。 「面白かったですよ。意外と、死にたがりの人間が多い印象でしたかね」  と言うよりは、レコード本人がそのタイプの人間を選別していたのほうが正しいのか。  ゲームの縛りプレイみたいに、普通の人間の走馬灯を体験することが飽きてきたので、って理由だったかな。 「へえー、そんなに面白かったのなら読んでみたくなっちゃうな」 「そう、ですか。でも、今はツチウラくんが読んでいるので。その後になるかと」  ツチウラくんとカシハラくんは友達なので貸し借りをするのは簡単そうな。 「本を読むのは面倒だから、オツノさんから聞かせてもらえるとうれしいかな」  それ以前の問題だったのか。それにしても異性から殺人鬼の話を聞かされたりしても、平気なんだろうか? 「おれが聞かせてやろうか?」  助け船のつもりなのか、ツチウラくんが口を挟んできていた。 「できることなら、オツノさんから聞きたいんだけどね。ぼくは」 「それは、うれしいですが。わたしは口下手なのでツチウラくんのほうが良いと思いますよ」 「それだったら二人の朝食についていかせてもらおうかな? オツノさんの感想やらも、聞けるだろうし」
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