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ぶっきらぼうに答えてからツチウラくんはコーヒーを飲んでいる。
「相変わらず美学の分からないやつだよな、ツチウラは。それで、オツノさんは同じように殺人鬼に殺されたいとか願っていたりするの?」
「願うほどではないですが。殺されても良いかな、と思っている殺人鬼はいますかね」
わたしもコーヒーを飲み、真紅って殺人鬼のことを知っていますか? とカシハラくんに聞いた。
「真紅。確か、赤いものを好んでいる殺人鬼だったっけ?」
「詳しいんだな」
「かなり名前が知れ渡っていると思うがな、新聞やらにも一時期のっていた気がするし」
それこそ、ツチウラが言っていたみたいなアイドルみたいな殺人鬼、って感じだったよね? カシハラくんが確認するようにわたしに目を向けている。
「そうですね。多分、その真紅って殺人鬼とカシハラくんは趣味が合うと思いますよ」
彼女も美学と言うか、殺す時のマイルールみたいなものがあるらしいので。そう言い、目の前にあるクッキーを口の中に入れた。
「へー、どんなマイルール?」
「人の命を汚すやつを殺すらしい」
わたしがクッキーを食べているからかツチウラくんが代わりに答えてくれている。そう言えば、昨日の夜に真紅のことも話していたんだったな。
「人の命を汚す? その、真紅って殺人鬼も殺しているんだからマイルールに反しているんじゃないのか?」
昨日のツチウラくんと、同じようなことをカシハラくんが言っている。
「言いたいことは分かるが。真紅にとって、普通に殺すのは汚すではないらしい」
「なぶり殺しか?」
「よく分かったな。そうだ、真紅にとっての汚すは、相手をなぶり殺すことのようだ」
そのマイルールとやらに準じているのか、真紅の殺した相手は全て安らかな表情をしていて、とても美しいとか。だったよな? とでも言いたそうにツチウラくんが頬をふくらませているわたしのほうを横目で見ていた。
口の中がクッキーだらけで、しゃべることができないので、軽くうなずくことに。
「まあ、他にも細かいルールがあるみたいだけど。基本的には、なぶり殺しの範囲だな」
オツノさんが、カシハラと趣味が合うって言ったのは、殺した相手の姿が美しく見える部分のことだろう。そうツチウラくんが補足してくれていた。
わたしが口の中のクッキーを飲みこんだのを確認すると。
「さて、そろそろだな。いくか、召し使い」
ツチウラくんが立ち上がっている。具体的にどこへいくつもりなのかは全く分からないが、そう呼ばれてしまったら断れないな。
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