ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 後編

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 カミシロさんと別れてから、わたしとツチウラくんは手をつないだまま大人の駄菓子屋にいったりした。  そんな感じでツチウラくんと一緒に遊んでいたのを夕食の時にミオンさんに教えると。 「カナデちゃん。それはデートだね」  そう、勘違いをされてしまった。 「デートじゃないような?」 「カナデちゃんは、そう思っているかもしれないけど。ツチウラはあれで、かなり単純なやつだからさ」 「そうですかね」  ツチウラくんは笑うと、失敗をした福笑いみたいな顔つきになるからな。それに、大人の駄菓子屋や色々な施設を巡っていた時は。むしろ表情が険しかったような。 「ところで、カナデちゃんは。この船にいるメンバーに知り合いはなん人いたのかな?」  隣に座っているミオンさんが椅子をこちらに近づけながら、ツチウラくんがしてきたのと似たような質問をしていた。  その時と同じように、三人。と、わたしが答えると。 「わたしとマヤ嬢とカシハラくんかな?」  ミオンさんが確認をしている。 「そうです」 「そっかそっか。まあ、意外と助けたほうは覚えてなかったりするよね」 「助けた?」  ミオンさんの言葉に、首を傾げてしまう。全く縁がないとも言えないが、そんなことをした覚えはない。 「間違っていたら、恥ずかしいんですけど。それは、わたしが誰かを助けたってことですか?」 「うん」  春巻きを食べつつミオンさんがうなずいている。美味しかったようで目が輝いていた。 「はい。カナデちゃん、あーん」  お裾分けのつもりなのか、箸で挟んでいる春巻きをこちらに近づけている。断る理由もないので、思い切りかぶりついた。 「カナデちゃんは幸せそうに食べるね」 「美味しいものを食べたら、誰でもそうなるんじゃないですか?」 「そうかな。カナデちゃんだけだと思うけどね。わたし的には」  なんとなく、話をはぐらかそうとしている気がするのでミオンさんの顔を見ていると、目を合わせてくれた。 「そんなに知りたいなら、本人から聞くのが一番じゃないかな。それに、わたしが教えるのはそれこそルール違反だろうし」  なんて言いながら、ミオンさんは楽しそうに笑っている。  なんに対してのそれこそ、なのかは分からないが。確かに本人に聞くほうが筋みたいなものが通っているのか。 「それで、その本人とは?」 「カナデちゃんはぼけるのが上手いよね」  意外でもなく、本音だったりするんだが。ミオンさんには冗談の類いだと思われているらしい。 「もしかして」 「先輩。おれの召し使いさんにあんまり変なことを教えないでもらえますか」  ミオンさんに質問しようとするとツチウラくんが口を挟みつつ、近づいてきていた。
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