ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 後編

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 また、なにかが開くような音が微かに聞こえたからか身体をびくつかせてしまう。幻聴じゃなくて、本当に誰かが部屋に。  変なところの肝は据わっているらしく心臓の音が小さくなってきていた。ゆっくり湯船につかってリラックスしてから浴室をでて、わたしはバスローブを身につけていく。  バスタオルで、髪の水気を軽く吸収させてからドライヤーで乾かしているけど、色々と間違っている気がした。  毒を食らわば皿まで、なんて言葉もあるんだし。今さら慌てるのも手遅れだろうな。 「さて、誰かいるのかな」  充分に髪を乾かしてからベッドやらクローゼットがある部屋につながっている扉を少しだけ開けて、のぞきこんだ。  今、見えている範囲では特に荒らされたりはしてなさそう。人もいないようだし、誰かが部屋を間違えて開けてしまっただけ。  多分、クローゼットのほうから、なにかをぶつけたような音が聞こえてきた。  驚いてしまい足が震えているが、このままって訳にもいかないか。音を立てないように扉を開けて、部屋に入っていく。  誰かが入っているのであろうクローゼットに近づいて、開けようとすると。背後から、ノックする音が聞こえてきた。  そろそろ夜中の十二時だから、神父の姿をしているツチウラくんがきているのかもしれない。 「ツチウラくんに、しらべてもらおう」  思わず、そんなことを口にしながら部屋の扉。鍵をかけるのを忘れていたみたいだな。  と言うことは今、あのクローゼットの中に誰かが入っている可能性が高いのか。  ドアノブを握ったままでかたまっていると扉をノックする音が響いている。 「あ、はい。すみません、どうぞ」  クローゼットのことで、なんとなく警戒心が高まっているらしく、わたしは部屋の扉を少しだけ開けて、ノックしている相手をのぞいて。ツチウラくんじゃなかった。 「えっと、どうも」  扉を開けながら、目の前に立っている人に軽く頭を下げつつ挨拶。約束をしてないから非常識と言う訳でもないけど、こんな時間に訪ねてくるとは。  首を傾げ、わたしは部屋のはしっこにあるクローゼットのほうを視線を向けていた。  どうかした? 不思議そうな顔をしているけど。と目の前に立っている人が可愛らしい笑みを浮かべている。 「わたしの推理が外れていただけなので気にしないでくれれば、幸いですね」
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