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自分で思っているより動揺しているのか、なんだか変な台詞を口にしている気がする。でも、そうだとするならクローゼットの中にいる人は一体。
「そうなんだ。えと、なんかごめんね。色々とやっている最中だったみたいで」
目の前に立っている人がなにかを恥ずかしがっているかのように、わたしから顔を逸らして。あ。そう言えば、バスローブ姿のままで歩き回っていたんだったな。
「すみません。お風呂に入っていたので」
「お節介かもしれないけど、女の子がそんな姿で歩き回るのは良くないと思うよ」
「そうですね。でも、とある男性的にはそれほど魅力的ではなかったみたいで」
バスローブ姿は見せてないけど、あれだけ平静に異性を自分の部屋で寝泊まりさせる人も珍しいと思う。兄さんは例外だとしても。
「そんなことないと思うけどね」
「ありがとうございます。ところで、こんな時間にわたしになにか用ですか?」
お世辞を軽くながしながら、そう口にしていたが。目の前に立っている人の用件はなんとなく想像はできている。
「ははっ。聞いていた通り、本当にうそつきなんだね。その目は全て分かっている人間のものだ。だからこそ」
「部屋の中で、お話をしませんか? そちらにとっても、そのほうが都合が良いでしょうし」
「そうだね」
短く答えると、その人は特に警戒もしないで部屋の中に入ってきた。全て分かっているのは、お互いさまらしい。
部屋の鍵をかけている音が聞こえ、わたしの身体が勝手に震えた。頭では全て分かっていたとしても、今みたいな反応をしてしまうのが人間。
それは、どうしようもないことだ。
わたしが、どれだけそのことを望んでいたとしても。
「お前だけは、本当に厄介だよな」
わたしの視線の先にあるクローゼットから一人の男性がでてきている。それを見たせいなのか、背後に立っている人が大きなため息をついていた。
「それは、お互いさまだ」
クローゼットからでてきている、神父の姿にコスプレをしている男性を見つめながら、わたしは。
「ツチウラくん」
なんとも言えない、奇妙な登場をした人間の名前を思わず口にしていた。
「さすがのオツノさんも、クローゼットからでてきたら驚いてくれるんだな。ところで、カシハラ。おれの召し使いになにか用か?」
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