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多分、目を見開いているであろうわたしの後ろに立っている存在に、ツチウラくんは声をかけている。
「それとも、リアル人狼ゲームの殺人鬼って言うべきかな?」
「いや。普通の殺人鬼だよ」
そう言い、カシハラくんは普段と同じように女の子みたいな可愛らしい笑みを浮かべていた。
「オツノさんも、色々と言いたいことはあるだろうが。今は、おれの後ろに下がっていてくれないか」
なんて声をかけているけど、こちらが動く前に。ツチウラくんはすでにわたしをかばうように腕を伸ばしながら移動をしていた。
「相変わらず、エゴイストだな。ツチウラ」
お前が、この船にのってくると聞いていた時点でこんな展開になるんじゃないかと予想はしていたが。
悲観的な言葉を並べているカシハラくんが肩を揺らしている。
「それは、お互いさまじゃないか?」
「そうだな。殺すにしても、守るにしても、本人の思いをないがしろにしているんだからな。ね、オツノさん」
前触れもなしに、カシハラくんがこちらに声をかけてきたので。
「あ、はい。そうですね」
驚いてしまったのか、わたしの口が勝手にそんなことを言っていた。
「オツノさんとは後で遊んであげるからさ。どんな殺されかたが良いか、考えといてね」
「おれには聞かないのか?」
わたしに向けていた、どこか温かい視線と違い、瞳をどす黒くしながら。
「ルールに反しているお前に、殺されかたを選ぶ権利はないからな」
カシハラくんはツチウラくんに対して静かに声を荒らげていた。
「それは、オツノさんもだな。召し使いで、おれがここにいる時点で死ぬ予定なんかないんだからな」
「あっそ」
そう答えると、カシハラくんの姿が消えてしまっ。いや、すばやく体勢を低くしてツチウラくんのほうに真っすぐにつっこんできている。
ツチウラくんの懐に入りこみ、みぞおちを貫くような勢いで、カシハラくんが拳をつき上げようと。しているのは分かっていたのか上半身だけをずらし、ご主人さまは簡単そうに避けていた。
つき上げている右腕をつかんで、ツチウラくんはハンマー投げでもするかのように身体を回転させ、浴室のほうへとつながっている扉にカシハラくんを投げつけている。
回転の勢いも加わっていたからか、浴室のほうへとつながっている扉を派手にばらばらにしつつ、カシハラくんが倒れこんでいく。
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