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「それで断っちゃったの? そのパーティにいくのを」
肉じゃがの人参を食べながら、ミオンさんがわたしに聞いてきた。勝手に決心した通りに彼女の家で夕食をいただいていた。
ミオンさんも用があったとかで、もともと誘ってくれるつもりだったらしい。
「いえ。美味しい料理がたくさん食べられるみたいなので。それも良いかな、って」
「そっか。良かった」
「良かった?」
思わず箸をとめてしまった。珍しく表情を見せたからかミオンさんが笑っている。
「なにが良かったんですか?」
そう聞くと、ミオンさんは唇のはしっこをもち上げて。それは秘密、と人差し指を顔の前で立てていた。
「そうですか」
たまにだけど、ミオンさんは意味のないことをする。わたしがあんまり表情を見せないからだろうな。
わたしがつれなくしたからか、ミオンさんが唇をとがらせてる。子どもがすねている時のような顔をしていて可愛くて、つい笑ってしまった。
それだけで満足をしたのか、やっとミオンさんが口を開いてくれた。
「実はさ、あたしも誘われたんだよね。そのパーティ」
カシハラくんがもっていたのと、同じ白い封筒をテーブルの上においている。
「パーティに参加をするためには、つき添いを連れていかないと駄目みたいでさ。カナデちゃんを誘おうかな、って」
カシハラくんも、同じようなことを言っていたけど。
「そもそも参加しなければいいのでは?」
ミオンさんの口振りからすると、とてもいやなパーティみたいだし。
「マヤ嬢からの誘いは断れないのさ。断ったら、それこそ面倒なことになるからね」
なんて言いながらも、にやついてるミオンさん。男性をあさる時と同じような顔つき、とは言わないほうが良いか。
朝みたいに、また悪戯をされかねないし。
「マヤ嬢。もしかしたら、その人。カミシロマヤって名前ですか?」
「うん。現シックスセンスの一人のカミシロマヤ。他にも色んな意味で名前は知れ渡っているかな」
シックスセンス。確か、リンソウ大学の成績上位者六名に授与される呼称だと表向きには言われているみたいだけど。
「そのシックスセンス、わたしが聞いた話では頭の可笑しい人が選ばれている。とか」
「まあ、間違ってはないかな」
ミオンさんが頬を指先でかいている。なんだか分からないが、ばつが悪そうだな。
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