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個人的には、もう勝負がついて。
「召し使い。もう少し後ろに」
こちらに振り向いている、ツチウラくんのこめかみの辺りになにかが飛んで。
「おっと」
こめかみにぶつかりかけたドライヤーを、片手で受け止めているツチウラくん。言われた通りに後ろに下がっていると。
カシハラくんが手で壁をえぐっているのが見え、ツチウラくんのほうにその破片を投げつけている。
真っすぐツチウラくんの顔面に飛んできている壁の破片に、ドライヤーをぶつけたのとほとんど同時に。
カシハラくんはすばやく壁をえぐり、また破片を。ドライヤーを投げて、反応が遅れてしまったのかツチウラくんの顔面に思い切り当たって。
いや。当たったと言うよりは、壁の破片にヘッドバットをしている。粉々にすることはできたが、ツチウラくんの額からは大量の血がながれていた。
あふれている血で、視界が悪くなるのをいやがっているのか左右に頭を振っているツチウラくん。
カシハラくんが移動をしているのが見えたようでそちらにすばやく身体を向けている。
「逃げるのか?」
「まさか」
廊下へとつながっている扉に近づいているカシハラくんがドアノブを、えぐっていた。
弧を描くように走りながら、えぐったドアノブをツチウラくんに投げつけ。
「お前が避けたら、オツノさんに当たるな」
カシハラくんは落ち着いた声でそんなことを口にしている。
ツチウラくんが、その言葉を本当に信じたかどうかは分からないが。一瞬、背後にいるわたしのほうを見てしまっていた。
「気にするな」
飛んできたドアノブを左腕で弾きながら、ツチウラくんがそう言ってくれている。
「そうそう。他人なんだからさ」
ドアノブを弾いて、がら空きになっているツチウラくんの左脇腹をカシハラくんが右足で蹴り上げている。
あばら骨がおれたのか、低くていやな音がゆっくりと響き。一瞬、ツチウラくんの表情がゆがんでいるのが見えた。
蹴り上げられて、浮き上がりかけた身体を捻りながら、カシハラくんの顔面を殴ろうとしたが。すばやく後ろに跳び退かれている。
「危ない危ない」
けど、あんまり動かないほうが良いんじゃないか? 二、三本はおれているだろう。とカシハラくんが楽しそうに笑っていた。
「確かに、そうだな」
あばら骨がおれていることを確認しているようで、ツチウラくんが自分の左胸の辺りを触っている。
誰が見ても、明らかにツチウラくんのほうが不利な状況なのに。
「はっ。全く、できすぎた状況だよな」
カシハラくんに蹴られた時に、頭の大切なものも千切れてしまったのか失敗した福笑いみたいな顔になっていた。
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