ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 前編

7/19
前へ
/110ページ
次へ
「可笑しい。と言っても頭の良いやつには違いないよ。実際、シックスセンスに選ばれているのは成績上位者だけだし」 「詳しいですね」 「リンソウ大学の生徒からすれば常識だよ。それにしても、カナデちゃんが興味をもってくれたのは、うれしいな」  ミオンさんがにやつきつつ探るような視線を、わたしに向けている。そのせいなのか、つい口をつぐんでしまった。  でも、相手はミオンさんだし。本当のことを話しても別にかまわないのか。 「そうですね。パーティにいくので興味はあります」 「へー、シックスセンスに。それとも、カミシロマヤ?」 「カミシロマヤ。中学の時に同じ名前の先輩がいたので同じ人なのかな? と」 「ふーん、カナデちゃん。どこの中学だったの?」 「ヨクナリ中学校ですね」  渾名のことは黙っておいたほうが良さそうだな。ミオンさんはかなり心配性なところがあるし。 「多分、同じ人だと思うよ。前に、マヤ嬢がその中学校のことを楽しそうに話していたような気が」  曖昧な記憶なのか、ミオンさんが人差し指でこめかみの辺りを軽く押している。 「ほうでふか」  じゃがいもを口一杯に含みつつ返答した。ミオンさんの言っていることが本当ならば、そのパーティではあんまり関わらないようにしないと。  授業が終わると、セーラー服を着ているオツノカナデはスクールバッグをもって、ゆっくりと立ち上がった。長く切りそろえられた黒髪が揺れていく。  自身に向けられてる視線には全く気にせずカナデは教室の外のほうに歩きだした。  色白な肌に真っ黒で大きな瞳。セーラー服の華やかさとは裏腹に、どこかはかない印象の少女。少しでも触れれば雪のようにとけてしまう。そんな美しさが人を惹きつけ、あるいは遠ざけていた。 「お、オツノさん」  カナデが教室の外にでようとするのとほとんど同時に、一人の男子生徒が上ずった声で話しかけている。  カナデは目の前に立ちはだかってる、きんちょうしているであろう男子生徒の顔を真っすぐに見上げた。 「はい。オツノですけど。わたしに、なにか用ですか?」  か細い声音だったが、教室の静寂さをすり抜けていくように、男子生徒の耳に響かせている。 「その。い、一緒に帰らない?」  その言葉のせいか教室の空気がどこかぴりついていく。カナデに向けられていた視線がその隣に立っている男子生徒のほうに移動をしていた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加